About Yusuke Shibata (HULS GALLERY TOKYO)

柴田裕介。HULS GALLERY TOKYO代表。1981年生まれ。立教大学社会学科卒。日本工芸の国際展開を専門とし、クリエイティブ・ビジネス面の双方における企画・プロデュースを行っている。日本工芸ギャラリー「HULS GALLERY TOKYO」「HULS GALLERY SINGAPORE」のキュレーション全てを手がけ、東京とシンガポールを拠点に活動を行う。またオンラインメディア「KOGEI STANDARD」の編集や工芸ブランド「KORAI」のブランドプロデュースも行っている。

作り手の声: 陶芸家/李荘窯 寺内信二さん <PART 2>

有田のサステナブルな取組み~泉山と天草の陶土開発プロジェクト~ HULS GALLERY TOKYOでは、2021年11月に、有田焼窯元・李荘窯四代目当主である、陶芸家の寺内信二さんの個展「泉山への回帰」を開催いたしました。本個展の関連企画として行ったトークセッションでは、古伊万里が原点となった寺内さんの作品づくりへの想い、産地での新たな陶土の開発についてお話いただきました。 *記事は前半と後半(本ページ)に分かれています。 前半はこちら - さて、ここからは泉山陶土の再生プロジェクトについてお話いただきます。寺内さんお願いいたします。 はい。私が泉山磁石場組合の開発委員長をしているなかで、今年(2021年)の7月に立ち上げたプロジェクトです。今では使われていない泉山陶石から陶土をつくって販売しようという試みです。組合には先人が築いた資産があるのですが、陶石を売っていないので管理費等で目減りしている状況です。 やはり、泉山で原料が取れて「有田」という産地が生まれたという点が重要です。原料があるからその土地に産業が生まれ、産地になるというのが基本なんですよね。ですが、有田では有田の土を使わず、熊本の天草陶土に頼っています。原料のないところで産地と言えるのかな?このままでいいのかな?というひっかかりがありました。 [...]

2022-03-13T16:34:14+09:002022/03/13|

暮らしの中で手を使うということ

人にとって、手を使うというのは、どういうことだろう。手で触れることで伝わるものは確かにあるし、手を使うことでさまざまなものを作り出すこともできる。文字を書くこと、服を縫うこと、楽器を弾くこと、料理をすること、そして陶磁器や漆器を作ること、それらはすべて手を使うことから始まっている。 タッチレスに向かう現代 ここ最近、日常で手を使うことの大切さを考えるようになった。きっかけは、新型コロナウイルスの出現により、ソーシャルディスタンスが推奨され、あらゆることが自動化やタッチレスに向かっていることだった。タッチレスでの決済や音声での入力はとても便利で、後戻りできるものでは決してないが、ふと気づくと、一日で手を細かく動かしているのは、パソコンとスマートフォンを使っているときのみという生活になってきている。このままいけば、手をほとんど使うことなく、一日を終える日も来るかもしれないとすら思う。 電子書籍と紙の本 人は手で道具を用いたことで脳が発達し、言語を獲得した。手を用いることは、それだけ人間という動物にとって、とても重要なことであったはずだが、私たちの現代の暮らしは急速に変化をしてきている。世の中は、さまざま技術で快適さや便利さを実現していく一方で、本来人に備わっていた手の感覚や能力がどこか置き去りにされているのではないだろうかと思う。例えば、電子書籍と紙の本。電子書籍は大量の本を持ち運べ、翻訳機能などもついた優れものだが、脳科学の世界では、紙の本のほうが記憶に残りやすいことがわかってきている。紙に触れながら読むことで、五感全体で記憶しているのだろう。学校の授業も、パソコンを用いた授業に変わってきているだけでなく、オンライン化も急速に進んだが、教育現場ではこうした変化による子供の学力の低下を心配する声もあるという。オンライン授業の利点は多いにあると思うが、一方で、身体や五感を用いた学習の大切さも、同時に浮き彫りになってきている。 うつわの手触り 食事の際の食器にも同じようなことが言える。自動で作られたプラスチックのお皿よりも、人の手で作られた天然素材の陶磁器や木のうつわで食事をしたほうが、印象に残りやすい。もちろん私自身がうつわが好きで、そこに意識が向かうこともあるだろうが、食事というのは、ただ味を楽しむだけのものではなく、手で触れることで、より一層その時間を味わい深くすることができる。お皿に独特の手触りや重さがあると、手が刺激され、それが記憶や感情に繋がっていくのだろう。特に日本の食文化は、お椀や鉢を手に持ちながら食べるため、食器の素材や形の良し悪しがとても大切になってくる。子供に天然素材のうつわやお箸を持たせるのは、食事に温もりを与えるだけでなく、手の感覚を養うことにも繋がっている。 私は、今年に入ってから、紙のノートに文字で日記を書くようになった。仕事では、パソコンやスマートフォンを活用してしまうが、私生活では手を使うことを意識し始めている。また、長く続いている毎日の日課の一つは、朝にドリップ珈琲を淹れることなのだが、手作業なので、同じ豆でも毎日少しずつ味が変わる。朝に淹れたてのドリップ珈琲を飲むととても気分が落ち着くが、手を使って淹れることで、ほんの少しの手や頭の運動になっているような気もする。他にも、抹茶を点てたり、絵を描いたり、楽器を弾いたりというのも良いと思う。朝起きて意識的に手を動かすということが、今の暮らしには大切なのではないだろうか。 人の手だからできること この先の未来は、自動化やタッチレスのような先端技術と、工芸品や紙の本のような手触りを追い求めたようなものとのハイブリッドな世の中になる。最近では、工芸品を購入するだけでなく、物を作るワークショップや自作キットも人気で、金継ぎや藍染体験は何ヶ月も予約が取れないほどの人気ぶりだ。日常生活で手を使わなくなった分、何かこうした機会に手を動かしたり、物を作り上げたりすることで、無意識的に人は身体のバランスを取っているようにも思う。こうして考えてみれば、手を使うということは人にとって特別なことであって、まだまだ多くの可能性も残されている。世の中がタッチレスに向かっていく時期だからこそ、人の手だからできること、人の手でしか伝えられないものを、今一度考える良い機会なのではないだろうか。 [...]

2022-03-14T09:05:21+09:002022/03/13|

作り手の声: 陶芸家/李荘窯 寺内信二さん <PART 1>

HULS GALLERY TOKYOでは、2021年11月に、有田焼窯元・李荘窯四代目当主である、陶芸家の寺内信二さんの個展「泉山への回帰」を開催いたしました。 本個展の関連企画として行ったトークセッションでは、古伊万里が原点となった寺内さんの作品づくりへの想い、産地での新たな陶土の開発についてお話いただきました。 *記事は前半(本ページ)と後半(後日公開)に分かれています。 - まずは寺内さんのご紹介からお願いいたします。 およそ60年前に有田に産まれて、大学は美大に進みました。親から窯を継ぐように言われたこともなく、あまり意識したことなかったのですが、高校3年になり進路を考える頃、継ぐのであれば、美術の勉強が必要だと思いました。 - 古伊万里の研究は、大学卒業後すぐに始めたのですか? [...]

2022-01-12T16:09:39+09:002022/01/12|

作り手の声:漆芸作家 田中瑛子さん

HULS GALLERY TOKYOでは2021年12月10日から25日まで、加賀で活動する漆芸作家、田中瑛子さんの個展「暁まで」を開催いたしました。その関連企画として、Zoomで田中さんのアトリエ訪問を配信。本インタビュー記事は、その内容をもとに作成したものです。 -愛知県のご出身とのことですが、石川県で活動されるようになったのはいつごろからですか? 大学で漆を始めて、より作品のクオリティを上げていこうと思い、卒業後に石川県へ移住しました。​​ -石川県は木地挽きが有名ですが、それを学ぶのが目的だったのでしょうか? そうですね。大学時代のもどかしさは、形を自分で作れなかったことでした。そこ(木地挽き)を自分でやれてこそ、より自分の感覚が活きてくるのではないかということで、この場所を見つけました。 -そこで、木地挽きから漆塗りまでを手がける瑛子さんのスタイルができあがったのですね。プロフィールによると、2012年に独立され、「工房あかとき」を設立。その後、東京、NY、インドネシアなどの海外でも展示・技術指導されています。 はい。日本の伝統技術はなかなか外に出ることがありません。でも、外国の職人さんは興味をすごく持っていたりする。そこに新しい道があったと言えるかもしれません。交流することで私自身も刺激を受けます。私が自由な形の漆器を作るようになったのも、それまで日本の伝統的なルールを意識する生活しかしていなかったけれど、海外に行って、海外の自由な発想に刺激をもらったからです。 -私たちも瑛子さんとシンガポールで出会いました。2018年の後半くらいでしたね。そのときをきっかけに、色々な作品を見せていただいて。シンガポールで作品を展示・販売し、その後、東京でも作品展をさせていただきました。 [...]

2022-01-12T16:06:31+09:002022/01/12|

作り手の声:陶芸家 鈴木大弓さん

HULS GALLERY TOKYOでは、陶芸家 鈴木大弓さんの作品のお取り扱いをスタートしました。鈴木さんは宮城県仙台市生まれ。大学在学中より作陶を始め、韓国にて修行を積んだ後、滋賀県信楽町にて独立。現在は三重県伊賀市に工房を移し、粉引をはじめ、刷毛目や三島、信楽の土を用いた焼締など、多彩な作品を制作されています。 今回は、そんな鈴木さんの陶芸家としてのルーツや現在の作陶活動についてお話を伺いました。 - 陶芸の道に入ったきっかけを教えてください。 大学の陶芸サークルです。特に器が好きだったわけではないんですが、大学2年生の終わりくらいに「このままだと大学生活遊んで終わっちゃう。何かやろう」と思って陶芸を始めたら、夢中になって抜けられなくなりました。 - 大学卒業後は韓国で修行を積んでいらっしゃいますが、韓国へ行こうと決心されたのはなぜですか。 [...]

2022-01-12T16:02:05+09:002022/01/12|

「オンライン・アトリエ訪問 〜漆芸作家 田中瑛子さん~」動画公開中

HULS Gallery Tokyoで開催中の個展の関連企画として、田中瑛子さんのアトリエ「Gallery and Salon 漏刻」からZoomでアーティストトークを配信いたしました。その動画を期間限定で公開いたします。 田中さんのお話に耳を傾けながら、普段はなかなか見ることのできないアトリエの雰囲気をお楽しみください。 下記のリンクよりご視聴ください。 ***ZOOMリンク*** ■動画公開期間:2021年12月25日(土)まで [...]

2021-12-17T09:21:30+09:002021/12/16|

ギャラリー営業時間延長のお知らせ

平素より、HULS GALLERY TOKYOをご利用いただきまして誠にありがとうございます。 当ギャラリーでは、2021年12月6日(月)より、営業時間を下記の通り変更させていただきます。 変更後の営業時間:10:00~18:30 みなさまのご来店、心よりお待ちしております。

2021-12-03T17:24:38+09:002021/12/03|

社会問題と工芸

現在、新型コロナウイルスの出現によって、私たちは、大きな変化の真っ只中にいる。こうした変化は、日々の暮らしや社会の在り方について見直す機会ともなり、気候変動や経済格差、少子高齢化など、様々な社会問題に関心を持つ人も増えてきた。多くの国で、物質的には豊かになり、寿命は伸びる一方で、社会全体が幸福になっているかと問われれば、そうだと言い切ることは難しい。世界を見渡せば、行き過ぎたグローバル化や資本主義の在り方にも何らかの修正が必要なことは顕著であり、アフターコロナを見据えながら、個人、企業共に、様々な社会問題に向き合う姿勢が求められている。 地方産業の活性化 私は、2015年頃から日本工芸の価値を国内外に伝えていく活動をしているが、こうした変化の中で、社会問題の解決に繋がる工芸の役割とはどういうものかをより深く考えるようになった。最も明確な役割というのは、地方産業の活性化だろう。工芸品は日本各地で作られているもので、そこに暮らす人々にとっては、大切な働き口の一つとなっている。かつてのように、多くの職人を抱えてものづくりをする時代には戻れないだろうが、その土地ならではの産業が魅力的であり続ければ、都会から地方に移り住む人もいるであろうし、雇用以外の価値も生まれる。 また、現代の工芸品は、観光産業にも大きく貢献している。地方の工芸品は、以前から旅の土産としての人気はあったが、今では、工房や地方の美術館への訪問そのものが旅の目的であることも珍しくない。郷土料理と同じように、工芸が地方を代表する一つの文化として幅広く発信され続ければ、海外への繋がりも生まれ、新たな可能性も広がっていくだろう。 気候変動に向き合う 現在、最も世界で声高に叫ばれている社会問題の一つである気候変動についてはどうだろうか。気候変動の大きな要因は、温室効果ガスの排出であるが、現代の工芸品は大量生産品ではなく、その他の大規模な産業と比べれば、全体的な排出量は少ないと言える。陶磁器やガラスを作る際には、高温での焼成が必要であることには課題はあるが、工芸品の材料の調達距離は短く、人の移動も少ないことから、現代のものづくり産業としては環境への負荷は少ない。何よりも大切な点は、工芸品が長く使われることを前提としたものであり、金継ぎなどのように、修理を繰り返しながら、何世代にも渡り使うことができるというのが、工芸品のサステナブルな魅力だろう。そうして、日々の暮らしの中で使う物に意識を向け、愛着を深めることが、環境問題への取り組みへの第一歩であるのだ。 暮らしの多様性 私自身は、様々な社会問題がある中で、最も工芸が重要だと感じる役割は、工芸品を通じ、文化や暮らしの多様性に気づくことだと思っている。これは、行き過ぎたグローバル化を見直すことでもある。様々な国を訪れてみるとわかるが、今では、どの国の都市でもショッピングモールにいけば、同じようなブランド、食品が並ぶ。どこの国で作られているかは、札を見なければわからないものばかりだ。そうしたものだけに囲まれていると、違いを尊重するような感覚は薄れ、いずれは、何を食べても同じ味、何を着ても同じ素材だと思うような人間になってしまうのではないかと思っている。日本の工芸品は、それぞれの地域の個性を映し出したものであり、かつ、一つずつが少しずつ異なる個性ある道具である。その少しずつの違いに気づくことは、そこに住む人々の個性や生き方を尊重することにも繋がっていく。日本に限らず、世界では、先進国であれ途上国であれ、その土地ならではの工芸品や文化はあり、それらを互いに尊重し、活かし合うことに、グローバル化の未来があるのではないだろうかと思う。 社会問題は、大きな課題であるほど、すぐに身近なものとして受け止めることが難しい。そのため、まずは「知ること」、その次に「感じること」、そして日々の中で「行動すること」を一歩ずつ行っていく必要がある。私も、毎日の暮らしの中で、社会問題を強く意識してきたわけではないが、さまざまな工芸品に向き合っていると、今までとは異なる暮らしの在り方に気づかされることがあり、少しずつ自分自身を変化させてきた。日常は快適で楽なほうへとみなで進むことだけが豊かな未来に繋がるものではなく、時には遠回りしたり、手間暇をかけることも必要であり、工芸には、そんな気づきが隠されているような気がするのだ。 文:柴田裕介

2021-11-27T14:05:14+09:002021/11/27|

李荘窯・寺内信二さんオンライントークセッション「サステナブルな有田へ」

HULS Gallery Tokyo で行われる李荘窯 寺内信二 作品展「泉山への回帰」の開催に伴い、オンラインにてトークセッションを開催いたします。 有田焼の産地として知られる、佐賀県有田町。1616年にその地で磁器の原料となる泉山陶石が発見され、日本で初めて磁器の生産が始まりました。日本の磁器と有田焼の原点とも言えるこの原料ですが、現在ではほどんど使われていません。有田焼の原料は天草陶土に取って代わられました。四代続く有田焼窯元の当主である寺内さんの視点で、産地の資源に再び光を当てる、サステナブルな取り組みについてお話いただきます。 ■開催日時:2021年11月19日(金) 19時-20時30分(事前登録制・無料) ■ゲスト: [...]

2021-11-09T17:02:23+09:002021/11/09|
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