About Yusuke Shibata (HULS GALLERY TOKYO)

柴田裕介。HULS GALLERY TOKYO代表。1981年生まれ。立教大学社会学科卒。日本工芸の国際展開を専門とし、クリエイティブ・ビジネス面の双方における企画・プロデュースを行っている。日本工芸ギャラリー「HULS GALLERY TOKYO」「HULS GALLERY SINGAPORE」のキュレーション全てを手がけ、東京とシンガポールを拠点に活動を行う。またオンラインメディア「KOGEI STANDARD」の編集や工芸ブランド「KORAI」のブランドプロデュースも行っている。

KOTENRA 個展 “Flower moment” 開催のお知らせ

期間:3月12日(金)〜 3月31日(水) *日・祝は休業 作家在廊予定日:3月12日(金)・ 3月13日(土)両日とも10:00〜18:00 HULS Gallery Tokyoでは、「時と記憶」をテーマに色彩の風景を映し出すジュエリーブランド「KOTENRA」の個展を開催いたします。KOTENRAとして創作活動を続ける小博良誠毅氏は、抽象画のイメージをジュエリーという小さな世界に移入し、身につけるアートともいえる作品を多数生み出しています。今回は、そのKOTENRAの鮮やかな色世界を生み出し、育んできた小博良氏による、初のインスタレーション展示となります。ジュエリー創作におけるモチーフの中心ともなり、また、日本の工芸品にもなくてはならない「自然」をコンセプトとした空間で皆さまをお迎えいたします。足元の小さな草花や時の移ろいを慈しむ、KOTENRAの世界。その新たな一面を感じていただけるはずです。期間中は新作を含めた耳飾り・ネックレス・ブローチなどの展示販売いたします。その他、HULSの企画でKOTENRAがデザイン監修し、木工作家の黒田工房・臼井浩明氏が製作した特別なジュエリーボックスも発表いたします。 *3月12日(金)と13日(土)には、作家によるジュエリーのカスタムオーダー会を行います。 時間: [...]

2021-02-27T15:20:17+09:002021/02/27|

現代工芸のキュレーター

現代において、工芸のキュレーターとはどういった存在であろうか。本来、キュレーターとは、日本では学芸員のことを指し、芸術や歴史などを学業として学び、博物館や美術館で働く専門家のことをいうが、今では、独自の目線で情報収集を行い発信する人のことを、そのように呼ぶこともある。私自身は、学芸員の資格を持っておらず、美術館で働いた経験もないが、ギャラリーでは、私自身の美意識で作品を選び、日々お客様に工芸品の成り立ちについて説明をしており、その点でキュレーターとしての役割を担っているとも言える。 工芸は、絵画や彫刻などの美術同様、歴史の深いもので、その知識には際限がない。私も、ギャラリーを運営する以上、日本工芸の作品や産地に関する正しい知識は必要不可欠であり、専門書による学びとともに、作り手の話しも伺いながら、独自で学びを続けている。日本では、陶磁器や漆器、織物など、様々な工芸の分野に関する専門書が出版されており、私のような日本人はそれらの文献を通じて多様に学ぶことができるが、英語や多言語に翻訳されているものは少なく、その点で、私たちがシンガポールで工芸を伝えていくことの難しさと希少さを感じることも多い。 目利きという役割 現代の工芸のキュレーターの仕事として、最も大切な役割の一つは「目利き」だろう。物や情報が溢れる時代になり、それらの価値を見極め、日々の暮らしにどのように取り入れるかは工芸の分野でも益々重要になってきている。目利きを養うには、まずはできるだけ多くの作品に触れること、その中でも名品と呼ばれるものは、いかにして名品となったかをよく理解することが、まずは大切だと思っている。陶芸であれば、古い時代の六古窯の作品に始まり、多くの作り手に影響を与えてきた魯山人や河井寛次郎の作品などは、写真を通じて見るだけでも、その美しさから感じるものは多い。そうした名品からは時代を超えた美意識を学びつつ、現代の作り手の作品には直に触れ、今の社会に求められている美を提案するのが、真の目利きであろうと思う。 調和した展示 また、キュレーターの核たる仕事の一つとして、「展示・陳列」というものがある。展示と聞くと、美術館や博物館の大きな展示会を想像しがちだが、場の大小を問わず、意味を持って作品を美しく展示するということは、キュレーターにとって大きな醍醐味の一つと言っていい。展示というのは、作品一点のみを見て行うものではなく、その周りの作品や環境との調和によって為されるものだ。感じ考えながら一所懸命に行うもので、簡単にさっとできるものでもない。不思議なものだが、私たちのギャラリーのような空間であっても、時と場所によって作品の佇まいは大きく変わるものであり、その変化を読み、独自の世界観を生み出せるようになると、この仕事がますます楽しくなってくる。 キュレーターという言葉は、現代になって用いられているような印象があるが、千利休を始めとする昔の茶人たちが海外の雑器を用いて侘び寂びを表現したり、民藝活動のように、名のない職人の品を民藝と名づけ、新たな美意識を伝えたことは、一種のキュレーターとしての活動であるとも言える。同じように、現代であっても、海外では、日本の工芸品が広く認知されているとは言えず、そこに新たな意味を設け、道を作るところに、私たちの大きな役目がある。その道は、ほんの数日でできあがるようなものではないだろう。日々のひとつひとつの積み重ねが、やがて新しい道を作ることになるのだ。 文:柴田裕介

2021-03-18T12:24:57+09:002021/02/23|

工芸と陰翳

物事には、「光」と「影」があり、「陽」と「陰」がある。一般的には、明るいもの、煌びやかなものは美しいとされ、暗いもの、簡素なものは侘しいとされる。谷崎潤一郎は「陰翳礼賛」という本の中で、生活の中の暗がりの在処を見つけ、そこに美を見出すことこそが日本ならではの美意識の一つだと書いた。暗がりの中で見る漆器は美しく、滑らかな光沢とは対局にある和紙の肌理には温もりが満ちていると。21世紀になり、すでに20年が過ぎるが、社会は未だに明るさや清潔さを求めるばかりで、暗がりの在処は忘れられていく一方に思う。その違和感こそが、自分自身が工芸の世界に身を寄せようとする理由なのかもしれない。 工業品と工芸品 「陰翳」というのは、ただの暗闇を指すものではなく、光の当たらない薄暗いカゲを指す言葉だ。光があるからこそカゲがあり、その両者が調和するところにこそ美しさがある。現代の工芸品は、その存在自体が、陰翳の中にあるとも言える。工業製品が輝きある光であるとすれば、工芸品の存在は陰であろう。現代では、工業製品があるからこそ、その昔は当たり前だった工芸品の在処が美しく際立つようになったのだ。高層ビルが立ち並ぶことで、古民家の価値が見直されることや、高音質の音楽が普及するにつれ、アナログレコードの人気が再燃していることにも似ている。昔を懐かしむというだけでなく、そのときには当たり前で気づかなかったものが、主流でなくなり陰のような存在になったとき、突如として、その価値が浮かぶようなことがあるのだろう。 暗がりの中の出会い 暗がりの中では、音や香りも大切な要素になってくる。耳を澄まし、湯を沸かす音を聞いたり、虫の音で夜を彩ることもある。工芸品は、触れたときの音にも個性があり、楽しめるものだ。出来の良い急須や茶筒の蓋を閉じるのは、なんとも言えない心地よさがある。香りも同じく、漆の匂いは独特であるし、天然木の工芸品はやはり趣がある。暗がりに身を置くことで、その感覚が研ぎ澄まされるのは言うまでもない。 社会的活動に関心のある方ならば、一度は名前を聞いたことがあるであろう「キャンドルナイト」。これは、その日一日は、照明を消し、キャンドルの灯りで夜を過ごそうというものだ。スローライフの代名詞のように扱われているものだが、日本の工芸の美に気づくために、海外で、そうした一日を作ってみたいとも思っている。暗がりの中で漆器や竹籠を眺めたり、触れてみる。その感覚は、何か大切な記憶を呼び戻してくれるのではないだろうか。 光が当たるものは無意識にその存在に気づくが、陰翳は、意識して目を向けねばその美に気づかないものだ。現代の工芸品も同じで、伝え続けてこそ、その価値に気づいてもらうことができる。工芸ギャラリーとは、そのためにあるのだろうし、説明せずともわかる光にすぐに流されてはいけまいと、日々自分に言い聞かせている。明るいもの、煌びやかなもののみを見るのではなく、薄暗がりの中で、心静かに何かに向き合っていたい。それこそが、今の時代に必要な侘び寂びに他ならない。 文:柴田裕介  

2021-02-08T16:17:13+09:002021/02/08|

小倉智恵美 作品展「心のみぎわ」開催のお知らせ

HULS GALLERY TOKYOでは、京都の竹工芸作家・小倉智恵美氏の作品展を開催いたします。海や湖など水のある場所と陸地の境を意味する「みぎわ」。伝統と現代の暮らしが寄り添い生まれるきわに重きを置き、作り手と使い手が互いに思いを巡らせ、二つの心のきわの所で共感し交わることができたら。小倉氏のそんな願いが込められた作品は、まるで刺繍のように上品かつ繊細です。「作り手の心と使い手の心のみぎわ」「伝統工芸のみぎわ」という二つの意を内包する本展では、リングやバングルなどのアクセサリーの他、コースターや豆皿、一点ものの花籠など、貴重な作品の数々を展示販売いたします。この機会にぜひご高覧ください。 小倉智恵美 作品展「心のみぎわ」 日時:2021年2月12日(金)- 2月27日(土)10:00-18:00 *日・祝は定休 会場:HULS [...]

2021-02-04T10:34:46+09:002021/01/29|

⽇本酒コラム開始のお知らせ

HULS GALLERY TOKYOでは、オンラインストアの特別企画として、日本酒コラムを開始いたしました。日本の酒器は、陶磁器や漆器、ガラスなど様々な種類があり、その材質や形の違いによって、同じ日本酒でも異なる味わい方、感じ方を楽しめるものです。また、工芸品が地域によってその特徴が異なるように、日本酒もまたその土地ならではのものでもあります。HULS GALLERY TOKYOでは、料理家であり、唎酒師としても活躍する茂村千春さんにご協力いただき、日本各地の酒器を、その土地の日本酒と共にご紹介します。 《⽇本酒コラム》第1話:佐賀県 https://store.hulsgallerytokyo.com/blogs/news/column_sake1 [...]

2021-01-29T11:50:41+09:002021/01/29|

「季節の和食器」展示

1 月のギャラリーは、寒い時期の生活に潤いを与え、温かい気持ちにしてくれる、おすすめの飯碗や汁椀などを展示いたします。閑古錐窯 山本英樹氏や隆太窯 中里太亀氏の器を中心に、ほかにも有田の磁器や越前・山中の漆器など、美しさと実用性を兼ね備えた器を多数ご用意してお待ちしています。 感染対策にも引き続き気を配っております。ゆとりある空間に並べられた、素敵な器に出会いにぜひお運びください。 会期:2021 年 1 月 6 [...]

2021-01-05T11:06:51+09:002021/01/05|

年末年始営業のお知らせ

HULS GALLERY TOKYO は、年内は12月29日(火)まで、年明けは 1 月 5 日(火)より営業いたします。1 月のギャラリーは飯碗や汁椀、茶器や酒器など、寒い季節におすすめの器を中心に展示・販売いたします。来年も変わらぬご愛顧のほど、よろしくお願い申し上げます。

2020-12-24T10:25:42+09:002020/12/24|

山中漆器・我戸幹男商店 展示会「生きとし生けるもの」開催のお知らせ

山中漆器・我戸幹男商店 展示会「生きとし生けるもの」 日時:2020年12月15日(火)- 12月29日(火)*日・祝は休業  開催場所:HULS GALLERY TOKYO (東京・赤坂) 営業時間:10:00〜18:00 1908年に山中温泉で創業し、伝統的な山中漆器の高い技術を活かした漆器づくりを続ける我戸幹男商店。土・水・太陽・空気・風の5つの自然要素をモチーフにした花器のシリーズ「MUSUBI」全十種類に草木を活け、展示販売いたします。天然の素材が生み出す美しい木目と、木地師の技の賜物である凛としたシルエット。その和の美意識に基づいたデザインを、花屋西別府商店による自然素材を用いたアレンジメントと共にお楽しみください。新作の重箱やカップも取り揃えてお待ちしております。 [...]

2020-11-27T16:53:26+09:002020/11/27|

甚秋陶苑 伊藤成二氏 個展「土と海の常滑焼」Zoomトークセッション開催のお知らせ

HULS Gallery Tokyoでは11月25日(水)から12月12日(土)まで、甚秋陶苑 伊藤成二氏 個展「土と海の常滑焼」を開催します。展示会関連イベントとして、12月5日(土)午後2時より、Zoomによるトークセッションを無料配信します。常滑の地で50年に渡り急須を作り続けている甚秋陶苑 伊藤成二氏をお招きし、常滑焼の魅力や茶器の製作についてじっくりお話しをうかがいます。 皆さまのご参加を心よりお待ちしております。 HULS GALLERY [...]

2020-12-14T12:15:34+09:002020/11/26|

甚秋陶苑・伊藤成二 個展「土と海の常滑焼」開催のお知らせ

日本工芸のギャラリー・HULS Gallery Tokyoでは、11月25日(水)より、常滑焼の伝統工芸士である甚秋陶苑・伊藤成二氏の個展を開催いたします。伊勢湾に面した、質の高い土が採れる愛知県・常滑の地で、伊藤氏は50年もの間、急須をつくり続けてきました。その精緻なろくろの技で生み出された作品は、私たちの生活の中に、自然の美と心地良さを運んでくれます。 今回の個展では、お茶の味をまろやかにするとされ、古くから日本人に親しまれてきた朱泥の急須をはじめ、デザイン性においても定評のある伊藤氏手づくりの茶器を多数取り揃え、展示販売いたします。注がれるお茶の最後の一滴にまで思いを巡らせつくられた茶器で、日々のお茶を和やかにお楽しみください。 同時に、伊藤氏が代表を務める、常滑焼の可能性を再発見するための「盤プロジェクト」による新しい器もご紹介いたします。ぜひこの機会にご来店くださいませ。 甚秋陶苑・伊藤成二 個展「土と海の常滑焼」 同時開催 盤プロジェクト展 日時:2020年11月25日(水) [...]

2020-12-03T15:55:39+09:002020/11/14|
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