陶芸には、成形や絵付け、加飾など、様々な技法・工程があるが、中でも私が最も好きな技法の一つは、「染付(そめつけ)」だ。海外では「blue and white porcelain」と訳されることが多いが、単純な「青と白」ではないし、やはり染付は「Sometsuke」であろう。
日本の染付は、素焼きした生地に、呉須という顔料で模様を描き、その上に透明な釉薬をかけ、再度焼成することで、鮮やかに青く染まり、その姿が藍染めの着物を思わせることから「染付」と呼ばれる。絵付け技法の中では釉薬の下に描かれることから「下絵」の一種とされる。有田のような染付の盛んな地域に行くと、工房には焼成前の黒く絵付けされた生地が大量に並ぶが、これらが一同に窯に入り、色鮮やかに発色することを思うと、とても心踊る。
染付は、日本の磁器の発祥地である有田(伊万里)を筆頭に、京都や瀬戸、波佐見、三川内、九谷など様々な産地で行われている。同じ技法ではあっても、産地によってもその色合いや筆の表現は異なり、また窯元によっても、呉須の配色や焼成温度、素地の違いなどから、微妙に風合いが異なる。
元来、染付は中国から伝わったものであるが、日本の美意識や食文化の影響を受け、独自に広がっていった。近年では、大量生産のために、筆を用いず、パッド印刷されたものも多く出回っているが、やはり染付品は、筆を用いたものこそ美しさが際立つ。特にこうした絵付けの品は「滲み」や線描きの筆加減が見どころであり、いろいろな作品に触れながら、自分自身の好きな色、表現を見つけてもらいたい。
窯元の染付へのこだわりは、色へのこだわりであるとともに、絵付けへのこだわりでもある。描く模様にまで興味を広げれば、染付の世界は果てしない。ぜひ、ギャラリーで染付の品をゆっくりと手にとって鑑賞してみてほしい。きっと、工芸の奥底の魅力に触れていただくことができる。
テキスト: 柴田裕介
作品:「全面花唐草 輪花」/李荘窯