日本には、地域に根ざした様々な伝統技法があり、それらの技法を用いて職人たちが一つ一つを丁寧に形作ってきた。その多くは手仕事であることから、「手仕事=工芸」とすることも多いが、私自身は様々な産地を訪ねる中で、地域に根ざしたものづくりこそ、日本の工芸の大きな魅力なのだと思うようになった。

日本は小さな島国であるが、そこには海だけでなく、山・川・平地などが多様に存在する。それぞれの地域には固有の暮らし方があり、そこにまた四季という季節の変化が加わり、一つの小さな島国の中で、多様な美意識が育ってきた。佐賀県の有田は、李参平によって良質な陶石が発見されたことから、磁器の製造が盛んになり、今では日本有数の磁器の産地となっている。輪島では、能登半島の荒波に負けない人々の気質が強固な輪島塗を生み出したのだろうし、もちろん古都・京都では、雅な加飾作品が重宝されたことは言うまでもない。

私が個人的に印象に残っている技法の中に、愛知県・常滑の「藻掛け」という伝統技法がある。常滑は海沿いの地域にあり、その地にあった藻を器に焼き付けることで模様としたものを「藻掛け」と言う。完成された器だけを見れば、ただの模様の一つとなってしまうが、自らの足で常滑に行き、太平洋の海を眺めていると、この地でこの技法が生まれたことは必然だったのだと感じ、作品がより味わい深くなってくる。

このように、工芸の産地というものはとても奥ゆき深いもので、行くたびに新たな発見があるものだ。私たちにとって、工芸の産地を訪ねることは、貴重な体験であり、財産でもある。私たちが取り扱う作品は、日本各地の文化や歴史と密接に関わっているものばかりである。ギャラリーを通じて、ぜひその熱量を感じていただけたらと思う。

テキスト:柴田裕介
作品:「白藻掛け茶壺」/甚秋陶苑